ウーバーと配達員を提訴 追突事故でけがの女性、損賠求め 大阪地裁

宅配代行サービス「ウーバーイーツ」の配達員の自転車に追突されてけがをしたとして、大阪市内の会社役員の女性(66)が、配達員と運営会社「ウーバー・ジャパン」(東京都)に計約250万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。配達員はウーバー社と雇用関係のない「個人事業主」と位置づけられているが、女性側は同社にも使用者としての賠償責任があると主張。同社と配達員は争う姿勢を示している。

 訴状などによると、女性は2018年6月2日、大阪市北区で歩道を通行中、20代の男性配達員の自転車に追突され、首や腰をねんざする軽傷を負った。配達員は運転しながらスマートフォンで配達先を調べていたといい、同年9月、過失傷害罪で略式起訴され、大阪簡裁で罰金5万円の略式命令を受けた。

 配達員は、配達業務を請け負う個人事業主で、配達件数に応じてウーバー社から報酬を受け取る。女性側は、配達員が同社の指示に従っており、「事実上の指揮監督関係にある」と指摘。同社にも事故の責任があると主張し、治療費などを請求している。

 ウーバーイーツは、同社と提携する飲食店の料理をアプリなどで注文し、配達員が配達を代行する仕組み。タクシーの配車サービスなどを手がける米企業「ウーバー・テクノロジーズ」が始め、日本には16年に上陸した。ウーバー社は訴訟について、「個別の事案については答えられない」としている。【藤河匠】

配達員は「個人事業主」扱い

 新型コロナウイルスの感染拡大による「巣ごもり需要」を背景に、食事宅配サービスの競争は過熱している。国内では、利用できる店舗が6万5000店を超えるウーバーイーツのほか、「出前館」やフィンランド発の「ウォルト」も参入。配達中の事故も多発しており、運営企業の対応が問われている。

 ウーバーの配達員でつくる労働組合「ウーバーイーツユニオン」によると、2020年1~3月、配達員が事故にあったという報告が32件寄せられた。

 ウーバーの配達員は「個人事業主」という扱いで、好きな時間に働ける自由さの半面、事故が起きた場合には相手との交渉にウーバー社が間に入らず、当事者同士で解決するのが通常だという。

 ウーバー社は事故を防ぐため、配達員に警察による安全運転講習を受講させたり、損害保険に加入させたりしている。ただ、指定時間内に一定の配達件数を達成するとボーナスが支払われる仕組みもあり、運転時にスピードを出す配達員も少なくないという。ユニオン副執行委員長の鈴木堅登(けんと)さん(28)は「ウーバーの仕組み自体に事故につながる要因があるのでは」と指摘している。【松本紫帆】

毎日新聞2020年10月23日 18時04分(最終更新 10月23日 19時01分)

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